
ネットワークエンジニアとはどんな職種? 仕事内容や平均年収などを徹底解説

インターネットの利用が当たり前となった現代において、企業ではクラウド化やDX化が進められており、IT関連の職種は今後も需要が増加していくと考えられています。中でもネットワークエンジニアは、インターネットを利用する上で欠かせない「ITインフラ」を構築するために必要不可欠な職種です。この記事では、ネットワークエンジニアの具体的な仕事内容やほかのエンジニア職との違い、実際に就業する上で役立つスキルと資格などをご紹介します。
ネットワークエンジニアとは?
ネットワークエンジニアとは、ネットワーク環境の構築や管理など、データ通信を快適に行えるようにするための業務を担うエンジニアです。対応する業務は、目的に応じたネットワークの要件定義、設計・構築から始まり、監視や運用・保守、セキュリティ対策、障害発生時の復旧作業に至るまで多岐にわたります。通信会社やシステム開発会社、企業のシステム部門などが主な活躍の場です。
近年は企業でも個人でもインターネットの利用が当たり前になり、ネットワークエンジニアの需要は高まっています。また、社内インフラのクラウド化が進み、従来のように自社内に設置した物理的なネットワーク機器を扱ってネットワークを構築する技術だけでなく、ソフトウェアを用いてネットワークを制御するスキルなども求められるようになりつつあります。
ネットワークエンジニアの主な仕事内容
ネットワークエンジニアの業務内容は、「要件定義」「設計」「構築」「運用」「保守」などの段階に分類されます。担当する業務の範囲はプロジェクトによって異なり、プロジェクトの規模によっては一人のエンジニアが一連のすべての工程に携わるケースもあります。ここでは、各段階で行われる主な業務内容について解説します。
ネットワークの要件定義・設計
ネットワークを構築する際は、最初に求められる要件を明確にして、必要な機器の性能やコスト、工数、スケジュールなどを定義します。プロジェクトの土台作りとなる重要な工程であり、要件定義をおざなりにすると、構築後に「通信速度が遅い」「使い勝手が悪い」といった問題が発生するリスクがあります。
要件定義の後は、定めた内容を基に詳細な構成の決定と機器の選定を行います。回線費用など、運用開始後の維持コストについても事前に検討します。
ネットワークの構築
設計書を作成したら、実際にネットワーク機器を設置してシステムを動作させます。クラウド上でネットワークを構築する場合は、物理的な機器を設置するのではなく、クラウドサーバーの設定などを行います。
構築にかかる期間はネットワークの規模によって異なり、多くの拠点を結ぶ場合は数カ月かかることもあります。構築後にはテストを行い、動作や通信速度、大きな負荷がかかった際の稼働状況などに問題がないかを確認します。
ネットワークの運用
ネットワークエンジニアの業務は、構築が完了したら終了ではありません。運用開始後はネットワークの維持管理に努め、問題なく運用できているかを監視したり、必要に応じて機器の設定や構成を変更する必要があります。
監視業務では、専用のツールなどを用いて通信状況や外部からの攻撃についてチェックします。この業務は、ネットワークエンジニアではなく「オペレーター」という担当者が担う場合もあります。
ネットワークの保守
運用を続けていくうちにネットワークに故障やトラブルが生じた場合は、ネットワークエンジニアが原因を究明して解決を図ります。問題解消のため、機器の交換が必要になるケースもあります。
また、大きなトラブルがなくても、劣化した機器の交換やソフトウェア・ファームウェアのアップデート、時代の変化に伴う新しい技術の導入が求められる場合もあります。こうしたサポートを継続的に行うことで、円滑に使用できるネットワーク環境を維持します。
ネットワークエンジニアとサーバーエンジニアの違い
ネットワークエンジニアと混同されやすい職種の一つに「サーバーエンジニア」があります。どちらもネットワークを機能させるための基盤に関わる職種ですが、それぞれ役割が異なります。
「サーバー」とは、さまざまな機能を提供するためのコンピューターやデバイスそのものを指し、サーバーエンジニアはサーバー自体を動作させるための業務を担当します。それに対してネットワークエンジニアは、ネットワークの構築により各拠点のサーバー同士をつなげる役割を担当します。
ネットワークエンジニアに必要なスキル・知識
業務に関する専門的な技術はもちろん、クライアントの要望やネットワークを構築する目的を的確にくみ取る力も、ネットワークエンジニアに求められる重要なスキルです。ここでは、ネットワークエンジニアとして活躍するために必要とされる主なスキルや知識について詳しく解説します。
ネットワークに関する知識
ネットワークエンジニアとして働くためには、ネットワークに関する知識が必要不可欠です。特に重要なものとして、インターネットで標準的に使用されている通信プロトコルである「TCP/IP」や、データを送るために最適な経路を導き出す「ルーティング」に関する知識などが挙げられます。
それ以外にも幅広い関連知識が求められ、近年ではネットワークセキュリティやクラウドに関する知識も重要視されています。
コミュニケーションスキル
先述したとおり、ネットワークエンジニアの業務の中でも特に重要な工程として「要件定義」があります。この要件定義の質を向上させるために必要なのが、クライアントの要求や悩みをヒアリングし、的確にニーズを捉えるコミュニケーション能力です。
加えて、社内外のチームメンバーと連携したり、チームメンバーやクライアントに対してわかりやすく説明をしたりと、業務全般をスムーズに進める上でもコミュニケーションスキルは欠かせないものといえます。
責任感やプロ意識
クラウド技術に代表されるように、ネットワークに関する技術は日々発展を続けています。ネットワークエンジニアとして長く活躍するためには、自ら新しい知識や技術を学ぶ意識が必要です。
また、ネットワークの構築・運用に際してはトラブルがつきものである上に、ネットワークを介するシステム全体が停止すれば、利用者にとって大きな損失につながる恐れもあります。そのため、責任感を持って根気強く冷静に対応する姿勢が求められます。
ネットワークエンジニアを目指す上でお勧めの資格
ネットワークエンジニアは、就業する上で必ず資格が必要になる職種ではありません。そのため資格がなくても目指すことはできますが、キャリアアップのためにも専門的な知識や技術を身につけることは非常に重要であり、以下のような資格の取得を検討するのが良いとされています。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が実施している国家資格です。ITエンジニアの登竜門といわれ、さまざまなエンジニアを対象としています。広い範囲から基本的な知識や用語について出題されるため、キャリアアップを目指す上で最初に取得したい資格ともいわれています。
この資格を取得することで、「上位の指導者のもと、問題なくIT関連の業務が行えること」を証明できます。また、基本情報技術者試験の上位資格として「応用情報技術者試験」があります。
シスコ技術者認定(CCNA、CCNPなど)
シスコ技術者認定とは、世界最大のネットワーク機器開発・販売会社「シスコシステムズ」が実施している民間資格です。世界的に普及している同社製品を扱う技術と、ネットワークの構築・管理に関する知識やスキルを証明できる資格として、多くの人が取得しています。
実務未経験者でも挑戦できる入門資格から、世界的にも保有者の少ない難関資格まで五段階に分かれており、実務経験一年程度のネットワークエンジニアであれば「CCNA」を、さらに経験を積んだエンジニアなら「CCNP」を取得するのが良いとされています。
ネットワークスペシャリスト試験
基本情報技術者試験と同じくIPAが実施する国家試験で、情報処理技術に関する日本の国家試験の中でも最高難易度とされる難関資格です。現場での実務経験に基づいた専門知識が問われるほか、記述形式の出題もあります。
取得できれば、一人前のネットワークエンジニアとして人に指導を行えるだけのスキルがあることの証明になります。ネットワークエンジニアとして働く上での最終的な目標の一つとして、この資格の取得を目指す人もいます。
ネットワークエンジニアのやりがいや大変なところ
インターネットの普及した現代において欠かせない存在であるネットワークエンジニアは、大きなやりがいのある仕事であるとともに、人によっては厳しさを感じることもある仕事です。主なやりがいや大変な面としては、以下のような点が挙げられます。
【やりがい①】社会や企業に貢献できる
インターネットが広く普及し、多くの企業でインターネットが利用できることを前提として業務が進められている昨今において、ネットワークエンジニアは企業の基盤を支える貢献度の高い仕事といえます。
また就業先によっては、企業内のネットワーク環境ではなく人々が生活のなかで利用するネットワーク環境を構築する業務もあり、道路の整備や街づくりなどと同様に、社会に貢献し生活を支える職種でもあります。
【やりがい②】達成感を得やすい
ネットワークエンジニアは、仕事の成果が可視化されやすい職種のため、達成感を得られる場面が多いのが特徴です。例えば、ネットワークがつながって通信ができるようになった瞬間や、難しいトラブルを無事に解決できた瞬間などには成果を実感しやすいです。
ネットワークに障害が起きれば顧客に迷惑がかかる可能性があるため、責任重大な仕事ですが、無事にトラブルを解決できれば顧客から直接感謝を伝えてもらえることもあります。
【大変なところ①】スキル習得の難しさ
ネットワーク環境のなかには、数千台のネットワーク機器を利用するような大規模なものもあり、構成が複雑化しているケースがあります。複雑に入り組んだ状態からトラブルの原因を切り分けたり、既存の環境への影響を考慮してネットワークを追加したりする技術は、一朝一夕で身につくものではありません。
また、技術の発展に応じて自身の知識やスキルをアップデートしていくことも求められるため、学ぶ姿勢を維持し続ける必要があります。
【大変なところ②】トラブルへの対応
ネットワークエンジニアは業務の一環として、ネットワーク障害などのトラブルへの対応を行います。ネットワークに障害が発生すると社内外のITインフラに大きな影響を及ぼすため、トラブル対応にはスピードが求められ、責任やプレッシャーを感じる人もいます。
トラブルの規模によって対応にかかる日数もさまざまで、規模が小さければ数時間程度で済みますが、大きいトラブルには数日から数週間を要する可能性があります。
ネットワークエンジニアの年収
ネットワークエンジニアの年収相場はどれくらいなのでしょうか。厚生労働省の「職業情報提供サイト(日本版O-NET)」<愛情:jobtag>に「ネットワークエンジニア」の掲載はありませんが、業務内容が近い職種として「システムエンジニア(基盤システム)」が掲載されているため、年収の参考として紹介します。
Jobtagによると、システムエンジニア(基盤システム)の平均年収は684.9万円となっています。年齢や経験年数とともに徐々に年収が上がっていく傾向にあり、最も高い平均年収は55歳~59歳の848.21万円となっています。
ただ、ネットワークエンジニアはキャリアやスキルによって大きく年収が変動する職種ともいわれており、上流工程に携わる人とそうでない人では年収に大きな開きがあります。そのため、着実にスキルを身につけてキャリアアップを図ることで、年収の増加が見込めます。
ネットワークエンジニアになるには?
ネットワークエンジニアの求人は、資格が必須ではない場合が多く、IT業界未経験でも応募が可能です。未経験者の場合は、運用や保守などの業務からキャリアをスタートし、経験を積んでから設計・構築工程を担当するのが一般的です。事前にネットワークの基礎的な仕組みを学び、知識を証明できる資格を取得しておくと、アピールポイントになります。
まとめ
ここまで、ネットワークエンジニアの仕事内容や求められるスキル、お勧めの資格や年収などをご紹介してきました。ネットワークエンジニアは、現代の生活に欠かせないネットワークの基盤を作る仕事であり、やりがいが大きい職種です。主体的に新たな知識や技術を学ぶことでキャリアアップも見込めます。
IT業界での就業経験がなくても、一からキャリアを積むことで、ネットワークエンジニアとして活躍できる可能性があります。ネットワークエンジニアを目指す方にとって、この記事でご紹介した内容が少しでも参考になれば幸いです。